血液検査は犬に身近なものですが、数値で異常値が出た場合、焦る飼い主さんが多いです。
検査数値の多くは聞きなれない英単語だったり、普段あまり使うことのない単位と数字です。予備知識がない状態でいきなり説明されても理解できないことがほとんどです。
では、わからないままでいいのか?という話になりますが、検査結果によって治療方針が180度変わることもあります。犬の健康を預かる飼い主として「わかりません」で済ませてしまうのは、あまりに心もとないですね。
検査数値についての知識が深まれば、その数値から犬の健康状態を正しく理解できるようになります。
また「なぜその検査が行われたのか?」を理解することは、結果と症状の理解につながります。
そのことが「今、犬の体に何が起きているのか?」を理解することにつながり、飼い主側も積極的に治療に参加する、日常生活での健康管理に生かすことになります。
このことが犬の病気治療、健康管理に良い結果をもたらします。
検査数値の理解には、前提として「体の仕組み・働き」の基礎知識が必要です。この知識がないと、検査数値を見ても、それが何をどう表しているかがわかりません。
そこで、この記事では犬の体について初めて学ぶ方向けに「体の仕組み・働き」の基礎知識から解説していくことにします。
犬の体の仕組み・働きの基礎分類
飼い主さんが知っておくべき、基本的な分類は以下の通りです。
- 呼吸器:肺
- 循環器:心臓・血管・リンパ
- 消化器:咽頭・食堂・胃・小腸・肝臓・胆道・膵臓・大腸・肛門
- 泌尿器:腎臓・尿管・膀胱・尿道
- 生殖器:子宮・卵巣・陰茎・陰嚢
- 内分泌腺
- 骨・筋肉
- 神経:中枢神経・末梢神経
- 感覚器:視覚・聴覚・平衡覚・嗅覚・味覚・皮膚感覚
それぞれ簡単に役割を見ていきます。
体の各臓器・器官の役割
呼吸器
呼吸器の主な役割は酸素を取り込み、二酸化炭素を吐き出す「ガス交換」です。
循環器
循環器の役割は「生命維持に必要な酸素・栄養などを全身の細胞に送る」「老廃物や二酸化炭素を運び去る」ことです。
心臓、血管、リンパがこの働きを担います。
消化器
消化器は、私たちの生命維持に必要な栄養素や水を口から取り入れ、消化、吸収します。そして必要に応じて加工・代謝を行い、不要物を排泄します。
消化器は実際に食物の通り道になる「消化管」と、消化液を分泌する「消化腺」とに分かれます。
泌尿器
泌尿器は体の中の老廃物を排泄する役割と、体液の調節を行います。
腎臓は血液中の不要物をろ過し、尿として体外へ排泄します。
また、血液中の溶け込んでいる水分や電解質などが一定量になるよう調節しています。
生殖器
生殖器は子孫を残すための器官です。
内分泌腺
体の中の臓器・組織・器官は互いに関連し、調節しあっています。その調節の際欠かせないのが「ホルモン」です。
ホルモンは「内分泌腺」と呼ばれる臓器で作られ、血液中に送り出され全身に広がります。
骨・筋肉
骨と筋肉は運動を司る器官です。感覚器と連動して、手足を動かします。
神経
体を調節する器官が神経です。神経系は中枢神経と末梢神経に分けられます。
中枢神経は「脳」「脊髄」です。
末梢神経は「体制神経」と「自律神経」に分類されます。
感覚器
外部の刺激を捉えるための器官です。
以上が体の臓器・器官の簡単な分類と働きです。
血液検査を理解するときは、この体の臓器・器官と検査結果を連動させて理解することが大切です。
犬が動物病院で受ける一般的な血液検査項目が、体の「どの部位」の状態を表すのか、を以下にまとめています。
*一般的な血液検査で、これらを全て検査されるわけではありません。動物病院や獣医師の判断により適宜追加、または省略される場合があります。
肝胆検査
- 総蛋白
- ビリルビン
- AST(GOT)
- ALT(GPT)
- ALP
- LDH
- コリンエステラーゼ
- コレステロール
- BUN
- 中性脂肪
- γ-GTP
腎検査
- 総蛋白
- LDH
- クロール
- クレアチニン
- 尿酸
- BUN
- Na
- K
- Ca
- 無機リン
膵検査
- LDH
- アミラーゼ
- 血糖
- リパーゼ
- 中性脂肪
- カルシウム
甲状腺検査
- T4
- FT4
- TSH
心検査
- ALP
- LDH
- CPK
- ナトリウム
- カリウム
- クロール
栄養検査
- 総蛋白
- アルブミン
- コレステロール
- 遊離脂肪酸
- 中性脂肪
脂質検査
- コレステロール
- 遊離脂肪酸
- 中性脂肪
血球数・貧血検査
- 白血球数
- 赤血球数
- ヘモグロビン
- ヘマトクリット
- MCV
- MCH
- MCHC
- 血小板
一般的な健康診断の血液検査でわかるのは?
ごく一般的な血液検査でわかるのは
- 肝・胆道系の病気
- 腎臓の病気
- 栄養状態
- 貧血の有無
です。
これらの異常が見つかった場合に、さらに状態を探るための詳しい検査をする、という流れになります。
初心者はまず、その数値が「体のどこ」の状態を表すかを理解しよう
犬の体のこと、血液検査の数値について知るのは初めてという人は、まず「この数値は体のどこの状態を表すんだろう?」という点を理解してください。
例えば、
「GOT、GPT、ALP、γ-GTPは『肝臓・胆道』の状態を表す数値だな」
「BUN、クレアチニンは『腎臓』についての数値だな」
という具合です。
数値とそれが表す体の部位をマッチングさせる。
数値と臓器が一致したら、次はその臓器の働き、もし病気になると何が困るか?を学ぶことで、犬の体の状態を正確に理解できるようになります。
体の臓器がそれぞれどのような働きをしているか?への理解は、獣医師の話の理解を助けます。
普段から、犬の体への基本的な理解をしておくことが大切です。
よく検査の数値だけをみて「上がった」「下がった」と不安がる方もいますが、数値だけを追ってもあまり意味がありません。
また、検査数値は単独で見ても役に立たない場合もあり、他の数値とセットで見ることで、体の状態が正確にわかるものもあります。
血液検査の数値に対し、間違った理解をしないためにも普段から飼い主自身が基礎知識を学びましょう。その上で、獣医師の説明があるときに積極的に理解する姿勢を見せることが大切です。