Office Guriの諸橋直子です。今回も「ペットフードの基礎知識」をテーマにお話ししていきます。
Office Guriでは普段「手作りごはん」についての情報をお伝えすることが多いのですが
「犬の食事」
というくくりで考えると、「ペットフード」も当然選択肢の一つです。世の中の大多数の人たちが利用している製品でもあります。
また手作りごはんを長く続けていても、犬の体調、老化にともない、ペットフードの助けが必要になる場合もあります(これは経験者目線からの話です。後述)。
大切なのは「ペットフードだけ」「手作りごはんのみ」というどちらか一方に偏るのではなく
- ペットフードの特徴
- 手作りごはんの得意分野
をそれぞれ理解した上で、うまく使いこなすことだと思います。
これについて、いまこの記事をお読みの読者の皆さん、お一人お一人の場合で自分だったらどうするか?についてぜひ今日は考えてみていただけると、とても嬉しいです。
というわけで、ここから本題に入っていきます。復習がてら、前回の記事を読んでおきたいという方は
こちらからどうぞ:
水分量の多いフード、どう使う?
前回の記事で「フードを水分含有量で分けた分類」をご紹介しました。
- ドライ(水分10%以下)
- ソフトドライ(水分25~35%程度、加熱発泡処理、湿潤調整剤使用)
- セミモイスト(水分25~35%程度、押出機による製造、湿潤調整剤使用)
- ウェット(水分75%程度、殺菌工程を経て缶やアルミトレー、レトルトパウチなどに充填)
ところでペットフードを売るお店に行くと、圧倒的にドライフードの種類が、そして陳列量も他と比べて多いことに気づかれる方もいると思います。
一般社団法人ペットフード協会によれば、2018年の国内産フード(犬用)の種類別出荷量は以下の通りです:
- ドライ:84,635トン
- ソフトドライ:22,289トン
- セミモイスト:5,118トン
- ウェット:7,918トン
出典:一般社団法人ペットフード協会 | 平成30年度ペットフード産業実態調査の結果
https://www.maff.go.jp/j/chikusan/sinko/lin/l_siryo/cyosa/attach/pdf/kako-73.pdf
これをみると、実際にドライフードの出荷量が圧倒的に多いんですね。
そんな中、「ソフトドライ」や「ウェット」といった、少数だけれどドライ以外のフードが、なぜ存在するのでしょうか?
それにはやはり、理由があります。
そして、その理由が理解できると犬の食事と健康を守ることにもつながります。
では「ソフトドライ」や「ウェット」が必要とされる状況とはどんな場面なのでしょうか。具体的に見ていきましょう。
食の好みが繊細、食が細い犬、老犬の味方「ウェット」
ここでは「ウェットフード」を例に取り、お話していきます。ウェットを利用するメリットは大きくわけて3つあります。
【1】食事から自然な形で水分補給
ウェットフードの特徴のひとつが、その水分含有量の多さです。
ドライフードの水分含有量が10%であるのと比べるとダントツの多さ。つまり、食事をしながら無理のない形で水分補給ができるというのがまずメリットとして挙げられます。
ちなみに手作りごはんの場合も、一般的に食事の8割ほどが水分なため「水を食べるごはん」と言いかえることもできます。
人間も1日に必要な水分の半分を食事から摂取しているというデータがあります。
水は犬、ヒトどちらにとっても生命維持に欠かせない大切なものです。
そのため、食事から水分補給ができることは、ウェットフードの優れた点と言えるでしょう。
【2】食いつきよし!嗜好性の高さ
次に挙げられるメリットは「嗜好性」です。ウェットフードは他のフードと比べて香りが強く、犬の食欲をそそる効果が期待できます。
そのため
「食が細い」
「そもそも食にあまり興味がない」
犬も、ウェットフードだと食いつきが良くなり、食べてくれる場合があります。
【3】老犬や、歯のトラブルを抱えた犬でも食べやすい
3つ目のメリットは「食べやすさ」。
水分含有量が多く、やわらかい。
材料自体が一度、粉砕されてからパテ状に固められているので、ほろほろと崩れやすく歯のトラブルを抱える犬でも食べやすいのが特徴です。
老犬にとっても、このウェットの特徴はメリットとなります。
老犬になると喉や顎の力が弱り、パサパサしたものは飲み込みにくくなる場合があります。
そんなときは、適度な水分を含みつつ、それでいてただの水のようにサラサラしていない食事が適しています。
手作りごはんだと、とろみを付けるのが常套手段。私の場合は、16歳半の老犬がいよいよ食欲がなくなってきたぞ…というとき、ポタージュで対応していました。
ウェットは水分を含み、適度な粘りもあるため喉や顎の力の弱ってきた老犬にも飲み込みやすいのです。
飲み込みやすさは誤嚥防止にもなるため、安全面でも優れている、と言えるでしょう。
とはいえ、メリットばかりではない
さて、ここまでウェットのメリットをお話してきました。しかし、当然ウェットも「万能」ではありません。栄養面でいくつか、注意すべき点があります。
ではその「注意点」とは一体何なのか?
これについて、次号の記事でさらに詳しくお話ししていきます。