SAE認定犬の管理栄養士アドバンス | Office Guriの諸橋直子です。
今回も定期的に疑問が寄せられる「犬の手作りごはん、栄養バランスってどう考えればいいの?」について、シリーズで解説していこうと思います。前回の記事はこちら。
前回のメールでは「素人が犬のごはんを手作りするなんて、栄養バランスとかちゃんと出来るの?!」という批判を受けた初心者の方が
「言われてみれば自分は栄養学の知識もあまりない」
「インスタなどに手作りごはんを上げている人のものは、どれも凝っていてバランスも良さそう…」
などと、他人との比較で落ち込んでしまうことは、問題ですよ、という指摘をしました。
さらに「犬の手作りごはん=家庭料理なのだから、凝ったものを作る必要はない」ということも述べさせていただきました。
とはいえただ、「家庭料理で大丈夫ですよ」と言っても、読者の皆さんの不安は全然なくならないと思います。そこでここから少し、理由を語りながら説明していこうと思います。
特に手作りごはん初心者の方で、今まさに「栄養バランスに自身が持てず、悩んでいる」という方は、今からお話しするポイントがはっきりわかるだけでも悩みの80%くらいは解決すると思います。
「これしか食べない」前提のペットフード、「色々食べる」が前提の手作りごはん
「お蕎麦とカレー、どっちが美味しいと思いますか?」と聞かれて、読者の皆さんはどう答えるでしょうか?
私の答えは「どっちも」です。
お蕎麦はお出汁のきいたつゆが美味しく、カレーはお肉とスパイス、野菜が渾然一体となってこれまた美味しい。そもそも2つともまったく別の料理だし、もっと言えば「カレー南蛮」なんていう、2つがミックスされたものまで存在する。
なので根本的に「どっちが美味しい?」なんて優劣を決しようという発想自体、そもそもあまり意味がないのでは、と答えます。
「うーん、そうだよね。お蕎麦もカレーも、どっちも好き」
お蕎麦とカレーだと、そんな風に納得できるという方も、何故かこれが
「ペットフードと手作りごはん」
だと、「ペットフードが」「いや、手作りごはんの方が」と何故か両者を比較し、どっちが優れているか?をほぼ自動的に考えてしまうことが多いです。
しかし実はここが、初心者の第一の落とし穴です。
この2つの食事は、根本的にまったく違うものなので、そもそも比較することにあまり意味がありません。
どこが違うか?というと、食事しての前提がまず違います。
その違いが先に述べた:
「これしか食べない」前提のペットフード
「色々食べる」が前提の手作りごはん
です。
ペットフードが「栄養バランスが良い」と言われる理由
「総合栄養食」という言葉をご存知でしょうか?これは特定のペットフード・パッケージに記載されている言葉です。
この「総合栄養食」には、以下の定義があります。
「総合栄養食」とは、ペットフードのうち、犬又は猫に毎日の主要な食事として給与することを目的とし、当該ペットフードと水だけで指定された成長段階における健康を維持できるような栄養素的にバランスのとれた製品であって「ペットフード公正取引協議会」の定める試験の結果を基に定められています。
出典:一般社団法人ペットフード協会HP
https://petfood.or.jp/knowledge/kind/
ここでのポイントは「当該ペットフードと水だけで」犬が健康で過ごせるよう、考えられた栄養バランスを基準に考えている点です。
もっと突っ込んでいうと「ペットフードと水以外は口にしない」という前提で考えられた栄養バランスです。そのため、それはもう、きっちりバランスが取れていないと逆にまずい、という話になります。
一方、手作りごはんは?といえば「日替わり、または一定サイクルで色々なメニュー、様々な食材を使って食べる」が前提です。
以上をまとめると
「ペットフードはそれしか食べない、が前提なので、栄養バランスを厳しく決めるのは当然。
でも手作りごはんは、同じものを食べ続けない、が前提で
色々食べて、結果として必要な栄養素が満たされれる食事」
という具合に、この2つの「食事としての前提条件」が全く違う、ということがおわかり頂けると思います。
そのため前提が違う2つのものを比べて、どっちかに優劣をつけるという議論には個人的に私は意味を感じません。したがってWEB上でも、こうした議論は今後も一切する予定がありません。
余談ですが、カレーとお蕎麦に「カレー南蛮」というハイブリッドがあるように、ペットフードと手作りごはんにも「トッピングごはん」が存在します。
これはペットフードに、茹でた肉や野菜、スープをトッピングするというもの。手作りごはんに興味はあるけど、いきなり全面的に手作りにするのはちょっと自信無い…という方が、まずはお試しでチャレンジするのにちょうどよい食事スタイルです。
カロリーオーバーにさえ気をつければ、栄養バランスが崩れや、犬の健康に影響が出るといった心配もありません。
「じゃあ、手作りごはんの栄養バランスは、どう考えたらいいの?」を考える前に理解しておきたいこと
ということで、今日のポイントは
「ペットフードと手作りごはんは、食事として根本から違うものだから
比較して優劣を考えるのはあまり意味がないですよ」
という1点。
ここを理解できて、ようやく
「じゃあ、手作りごはんの栄養バランスは、どう考えたらいいの?」
という、次のステップに進む準備が整います。
次号の記事ではいよいよ手作りごはんの「栄養バランス」についてどう考える?というテーマに入っていきます。現在、栄養バランスで悩んでいる、と言う方向けに基本のお話をしていきます。
必要を感じる方は、是非楽しみにしていてください。