Office Guriの諸橋直子です。犬の蚊、マダニ対策の基礎知識を解説するシリーズ記事の2回目です。
前回の記事はこちら。
今回から「動物病院で処方される、各種駆除薬」について解説します。
駆除薬の役割をしっかり理解できると、蚊・マダニ対策を、より隙なく徹底して行うことができるので知っておいて損はない基礎知識です。
動物病院で処方されるのは「駆虫薬」あれ?「予防薬」じゃないの?
はじめに「フィラリア症」の基本の話からしていきます。
「フィラアリア症」は犬が蚊に刺されることにより、体内にミクロフィラリアが侵入することで起こります。
「ミクロフィラリアってなんですか?」という方のために説明すると、フィラリアという虫の幼体です。
フィラリアは別名「犬糸状虫」と呼ばれます。その名の通り、糸状の姿をした虫です。
ちなみに「フィラリア」でGoogle画像検索の結果をみると、ソーメン状の気持ち悪い虫の写真がごっそりヒットするので、虫が苦手な方は絶対に検索しないでください。
(とはいえ検索しなくても、この時期動物病院にはフィラリアのポスターが貼ってあり、見たくないのに見ちゃいました…という方も増えると思います。
それだけ動物病院も「予防大事大事だから、ちゃんと投薬してね!」というメッセージを強く伝えたいんですね)
このミクロフィラリア、犬の体に入ると成長をはじめ、2~3ヶ月かけて大人になる準備をします。この期間はまだ、犬の筋肉や皮下組織、脂肪などに静かに住み着いている状態で特に悪さはしません。
ところが、ミクロフィラリアが成長を続け成虫になると、厄介なことに犬の心臓や肺動脈に住み着きます。そして立派な大人となったフィラリアは、そこで子どもを生み始めるのです。
おいおいおいおい!
人の犬の体に勝手に住み着き、栄養を吸い取って成長し、挙句の果てに子どもまで生んで増えようとするとは何事だ!と私は初めてこれを知ったとき、驚きました。
そもそも、そうやって栄養と住処を提供してもらっているのであれば、その宿主である犬に感謝し、控えめであるべきです(虫には無理だとは思いますが)。
それなのに、フィラリアはそのまま放っておくと、調子に乗って増え続け宿主である犬の心臓や肺動脈内の血液の流れを悪くします。
ありていにいうと、虫が増えすぎて血管が詰まります。
そうすると犬の寿命は短くなり、最後は死んでしまいます。
犬にとって迷惑なフィラリアは「害」になる前に駆除する
は? バカなの????
増えるのを程々にして、宿主である犬の健康を害さなければ、フィラリア自身も長生きできるはずです。
それを調子に乗って増えて、快適な住居と栄養を提供してくれる犬を殺してしまうのです。
これはもう、何だそれ、フィラリアのばーか!と100回くらい言ってやりたい気分にもなります。
そもそも家賃も払わず勝手に住み着いて、何、人の犬の健康害してるの?
まさに害虫ってお前のことだよ…とフィラリアを罵りだすとキリがないのでこの辺にしておきますが、要はこの虫を
「小さいうちに薬で殺してしまおう」
というのが、フィラリア駆虫薬のお仕事です。
もっと突っ込んでいうと、蚊にさされること自体を100%予防するのは難しいのです。
そして噛まれる以上、ミクロフィラリアが犬の体内に入ってくるのも防ぎきれません。
なので、毎年犬たちの何%かは、蚊に噛まれた際にミクロフィラリアの侵入を許していることになります。
だからこそ、それが大きくなって心臓に集まり、子どもを生んで増える、というサイクルに入る前に、サクッと息の根を止めましょう、というのがフィラリア駆虫薬の目的なのです。
よく
「フィラリアの薬ってなんで毎月飲まないとだめなの?予防薬だから1回飲めば予防してくれるんでしょ?」
という声が聞かれますが、駆虫薬だから毎月飲む必要があるのです。
極端なことを言えば、蚊の活動シーズンは全期間を通して、犬は体内にミクロフィラリアを送りこまれるリスクに晒されます。
なのでシーズン中はもちろん、シーズン終了後もプラス1ヶ月後くらいに薬を飲んで、確実に息の根を止めておこうぜ、という念には念を入れた駆除対策なんですね。
シーズン中は決められた投薬スケジュールを守り、正しく予防しよう
というわけで、今回はフィラリア症の駆虫薬についてお話ししました。
この薬の働きと投薬の意味がわかると
「そうか、スケジュールはちゃんと守らないとな」
「飲み忘れに注意しなきゃ」
という風に、飼い主さんの意識も変わります。
積極的な「投薬」への理解は、その後の健康に影響する
ちなみに、人間での統計ですが
「病院での治療や投薬の意味を、自分から積極的に理解に努めようとする人」
と
「そうでない人」
の間には、明らかに前者の方がその後の健康に良い影響が見られ、健康を維持できる事がわかっています。
無関心でいるより、治療や薬の意味を理解し積極的に自分の健康を管理しようとする人の方が
健康でいられる、というのはある意味納得の結果です。
犬の場合は自分で薬の意味を理解することはできません。
それを代わりにやるのが、飼い主の仕事です。
犬の健康を守るためにも、病気予防のための取り組みの「意味」をしっかり理解し積極的に関わっていきたいところですね。
今日はここまでです。
次回は「マダニ」の駆虫薬について解説予定です。