こんにちは。Office Guriの諸橋直子です。さてここからは「犬と野菜」のお話の続きです。
これまでの記事はこちら。
食物繊維(セルロース)を分解できる動物はいない
結論から言えば、犬は雑食動物です。また、自前の消化酵素で野菜に含まれる食物繊維を分解できる動物はいません。
この2つが、「犬に野菜を与えると、腸に負担がかかるのですか?」という疑問を考える際のキーポイントとなります。
「犬は雑食動物である」については前回のメールでお話ししましたので今日は「自前の消化酵素で野菜に含まれる食物繊維を分解できる動物はいない」にフォーカスしてお話を続けていきますね。
あと、今日はこれから栄養学のちょっと突っ込んだお話しもします。
普段、基礎的な講座などではなかなかここまでのお話する機会がないのですが、こうした「一歩突っ込んだお話」も頭に入れておくことで、より「安心材料」が増えます。まあ嫌がらずに聞いてください。
食物繊維を消化できないことは、本当に腸に負担か?
「野菜が消化できないので、野菜を食べると犬の腸に負担がかかる」という説の根拠として良く言われるのが、野菜に含まれている繊維質を犬は消化吸収できないじゃないか!というもの。
実は人間も食物繊維はさほど消化できていません。
私たちは日々、野菜を食べてすごすことが多いです。時々は「とうもろこし」「ひじき」など、消化しにくいものを食べては、翌日トイレで「こんにちは!」と前日食べたものと再会…。
汚い話ですがそういうことありませんか?
そういうとき、あなたは「うわ~!!消化できなかった!!腸に負担がかかったー。もうだめー。今日は何もする気が起きないー(←ちょっと大げさですが)」と、思いますか?
「いいえ、特に思いません。あ、出ちゃったんだな、というのがそのまんまの感想です」
セミナーで受講者の皆さんに同じ質問をするとだいたいこのようなお声が返ってきます。
それであれば、犬も同様に「ただ出ていっただけ」ですので特に負担はかかっていないと思われます。
消化できない=腸管を通過しただけ
我が家の犬も、よく野菜は出てきますが(ミニトマトの皮など…)特に負担がかかっているようには見えません。
肉が多目のときでも、野菜多目のときでも毎日変わらず元気です。
「…確かにそういわれるとそんな気がしますけれどもまだやっぱり不安です…」
そういう方のために、「栄養学」「動物の消化」という視点から、今からさらに掘り下げてお話ししますので良く聞いてくださいね。
食物繊維=セルロースの消化はどう行われる?
消化されない食物繊維の「繊維質」の主だったものをセルロースといいます。これが植物の細胞壁を造る基本的な成分です。
そして実はこれ、デンプンなんかと同じ糖質で、ブドウ糖が長く繋がってできています。
「え?食物繊維ってブドウ糖からできてるんですか?何かイメージつきませんが…」
はい、そうなんです。ちなみに栄養学的に見ると「糖質=炭水化物+食物繊維」
「糖質」という大きなくくりの中に「消化吸収可能な炭水化物」と「消化できない食物繊維」とがある、ということですね。
ここまでが「栄養学の視点」からのお話。
そして「動物の消化」という視点からのお話を引き続きさせていただくと…。
- 動物の持つ消化酵素はデンプンを分解してブドウ糖を作ります。
- 逆に動物はセルロースを分解できる消化酵素を持っていません。
- 草食動物の場合は、消化管内にいる細菌がセルロースを分解する酵素を持っていて消化を担っています
だから牛などは草をたべてエネルギーに換え、豊富に牛乳を出したり、おいしい肉を私たちに提供してくれています。繊維質を分解して、中に含まれるブドウ糖を有効活用できるんですね。
つまり、私たち人間と犬は自前の「セルロースを分解できる消化酵素」は持ち合わせていません。
一方で人間の場合も犬の場合も、腸内に住む微生物がいますから、食物中の繊維質の5%程度は分解される、というデータもあります。
つまり「エネルギーとして利用する」という視点で見ると食物繊維はエネルギー源としてはまったく向いていないことになります。
そして分解されなかったものは?出るだけですね。「消化されなかったものは出る」それ以上でもそれ以下でもない、ということです。
ただ、犬の腸は確かに草食動物に比べると腸の長さも短いですそういう意味では犬の腸は繊維を消化するように「設定」はされていないともいえます。
そのことが「犬の野菜を食べさせてはいけない」とイコールではありません。
犬の腸内で野菜類の消化率が低いことは事実です。でももし、犬の体内で消化されないということに「メリット」があるとしたら?
というわけで次号では「食物繊維が犬にもたらすメリット」について
お話をしていきますね。
お楽しみに。