犬の管理栄養士アドバンスの諸橋直子です。さて我が家では、犬たちも旬の魚をよく食べます。「犬=肉」のイメージが強いですが、多くの犬たちは魚も好んでよく食べます。
魚は良質のタンパク源であり、魚に特有の脂肪酸の供給源にもなります。四方を海に囲まれた日本は、通年新鮮で美味しい魚が食べられる、恵まれた地域です。というわけで、今回から数回に渡り「犬に魚を与える栄養学的メリット」について、解説していきます。
魚に含まれる、犬に有益な「栄養成分」をチェック
魚を与えることで、犬旬や美味しさを味わうだけでなく、栄養学的なメリットを享受できます。以下、魚の栄養成分の代表的なものを挙げます:
- 良質なタンパク質(魚の多くはアミノ酸スコア100)
- 赤身魚に含まれる多くの鉄分(特に血合い部分)
- 赤身魚の肝臓にはたっぷりのビタミンD
- 青魚に多い「EPA」「DHA」(犬の必須脂肪酸)
このように、その食材に特有の栄養素や多く含まれるものを知ることで、犬の食事メニュー作りと健康管理に活かせます。では上記の4項目は具体的にどういうことなのか?を順を追って解説していきます。
魚には良質なタンパク質が含まれる『魚の多くはアミノ酸スコア100』
『アミノ酸スコアとは?』
食品に含まれるタンパク質の「質」を表す指標です。私たち動物は、生きていく上で「アミノ酸」というものを必要とします。「アミノ酸」はタンパク質を合成するのに必要なパーツです。この「アミノ酸」を元に、私たちは生きていくのに必要なタンパク質を体内で合成していますが、このパーツには2種類が存在します。
- 非必須アミノ酸(材料があれば体内で合成できる)
- 必須アミノ酸(体内で合成できないので、必ず食事から摂る必要がある)
人間の必須アミノ酸は現在9種類。
- イソロイシン
- ロイシン
- リジン
- メチオニン
- フェニルアラニン
- トレオニン(スレオニン)
- トリプトファン
- バリン
- ヒスチジン
犬の必須アミノ酸は、上記9種類に「アルギニン」をプラスした10種類です。
アミノ酸は、すべてが適切な割合で含まれていないと、体内で効率よく利用できないという特徴があります。このバランスを表す数値が「アミノ酸スコア」です。フルスコアは「100」。数値が低くなるほど、アミノ酸バランスが悪いタンパク質である、ということになります。
犬にとって、利用効率の良いタンパク質摂取を
食物に含まれる栄養素を一覧表で調べられる書籍「八訂 食品成分表 2021 」には、食物のアミノ酸スコアが掲載されています。当然ですが、これは人間の必須アミノ酸を基準に算定したものです。しかし、多くの場合でアミノ酸スコア100の食品は犬とっても、効率よく利用できるものです。
その点、魚の多くはアミノ酸スコア100ですから、犬にとっても利用価値があると言えます。例えば、マグロ、あじ、いわし、カツオ、鮭など、犬の手作りごはんでおなじみの魚はすべて、アミノ酸スコア100です。
特に成長期の犬や老犬にとって、利用効率の良いタンパク質はメリットが大きいです。
そのため、このような食材に含まれるタンパク質についての知識を持ち、犬の健康状態や、ライフステージに合わせた食材選びが大切です。
次回の記事では引き続き、魚を犬に与える栄養学的メリットを解説します。「鉄分の重要性、効率の良い摂取方法」を取り上げます。
参考
e-ヘルスネット | アミノ酸 | 厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-001.html
犬と猫の栄養成分辞典 | タンパク質(アミノ酸) | ROYAL CANAIN
https://www.royalcanin.co.jp/dictionary/five_nutrients/amino/