犬の管理栄養士アドバンスの諸橋直子です。さて、前回に引き続き「犬に魚を与える栄養学的メリット」の解説をしていきます。前回の記事はこちら「犬に魚を与える栄養学的メリット(1) | タンパク質とアミノ酸スコア | 犬の手作りごはん」。
赤身魚と白身魚では「鉄分」の含有量に大きな差
まず「赤身魚」「白身魚」を明確に区別しましょう。
【赤身魚】とは?
例:
- カツオ
- マグロ
実際に切って身を見ると赤いこれらの魚を「赤身魚」と呼びます。この赤い色素は「ミオグロビン」と呼ばれます。鉄を含んだタンパク質で、筋肉に酸素を貯蔵する働きをしています。
マグロ、カツオはいずれも速い速度で移動する魚です。カツオは時速60km,マグロは時速80~90kmで移動します。加えて、マグロは長距離を泳ぐ魚です。日本近海で水揚げされるマグロも、遠くアメリカ西海岸まで泳ぐものもあります。このように、速く、長距離を泳ぐためには、筋肉に酸素をたっぷり蓄える必要があります。赤身魚は、こうした必要から筋肉に「ミオグロビン」を多く含んでいます。
【白身魚】とは?
例:
- ほっけ
- 鮭
- 鱈
白身に分類されるのは、マグロのように長距離を回遊したりせず、静かにじっと暮すタイプ魚です。
鮭は身の色がサーモンピングであるため、白身魚に分類されることを意外に思う方もいると思います。しかし鮭は元来、白身魚です。身の色は、鮭の餌となるオキアミの色素「アスタキサンチン」によるものです。「アスタキサンチン」はエビやカニの色を作る色素です。鮭がオキアミを食べその色素が体に蓄積されると、「サーモンピンク」と呼ばれる色になります。
「鉄」のはたらき
体内での「鉄」の働きについて解説します。「鉄」の多くは血液中に「ヘモグロビン」として存在します。また、筋肉中には「ミオグロビン」として存在します。その他は肝臓、脾臓、骨髄などに貯蔵されています。
「ヘモグロビン」「ミオグロビン」いずれも鉄がタンパク質と結合した形で、これらが全身に酸素を供給しています。そのため、鉄が不足すると貧血となり、虚弱、疲労などの症状が現れます。
吸収されやすい鉄、されにくい鉄
そんな大切な「鉄」ですが、実はミネラルの中でも、特に「吸収されにくい」ことが知られています。人間の場合、食事から摂取した鉄の15%程度しか吸収されないと考えられています。ただし、この数値も食品の種類や食べ合わせ、その時の体の状態により変わります。
とはいうもの、鉄が吸収されにくいミネラルであることには変わりありません。そのため、できるだけ効率よく、鉄を吸収するにはどうすればよいか?も分かっています。
鉄には「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」が存在します。
「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」
動物性の食品に含まれるのは「ヘム鉄」で、比較的吸収されやすいです。植物性の食品に含まれるのは「非ヘム鉄」です。「非ヘム鉄」の吸収率は「ヘム鉄」と比べて下がりますが、ビタミンCと同時摂取することで吸収率が上がることが知られています。
鉄分摂取に「赤身魚」がおすすめ | 「血合い」も食べよう
これまで述べてきたように「赤身魚には、鉄分が多く含まれる」ことから、犬の鉄分補給におすすめです。さらにいうと「血合い」部分は鉄分の宝庫です。マイワシ、サンマは全体の2割程度が血合い肉です。こおため、鉄分補給に適した魚といえるでしょう。「血合い」は独特の赤黒い色や香りで敬遠されがちですが、好む犬は多くいます。
参考
海と船 なるほど豆事典 | (公財)日本海事広報協会
https://www.kaijipr.or.jp/mamejiten/seibutsu/seibutsu_4.html
正しい知識で健康をつくる あたらしい栄養学 | 高橋書店
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