「漢方薬にも、西洋薬のような副作用ってあるんですか?」
犬に漢方薬を利用することを考えている漢方薬初心者に向けて、この記事では「副作用」について解説します。
「漢方薬は自然由来の生薬から作られるので、副作用はないんですよね?」とよく誤解されがちですが、漢方薬も薬である以上、当然副作用はあります。
薬は体に働きかけ、何らかの作用を起こすものです。量が適切であれば薬として望ましい影響が出ますが、量が多すぎると毒としても作用します。
これは自然由来のものでも同じこと。また自然界には「自然毒」も存在します。例えば、身近な自然毒には「ベニテングタケ」のような毒キノコがあります。
参考 | 自然毒のリスクプロファイル:キノコ:ベニテングタケ(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/poison/kinoko_18.html
自然=優しい、ではありません。同様に、漢方薬の副作用についても正しい理解が大切です。
副作用を起こしやすい生薬
漢方薬で副作用を起こしやすい生薬は以下の4つです。
- 麻黄(まおう)
- 附子(ぶし)
- 大黄(だいおう)
- 甘草(かんぞう)
1.麻黄
麻黄はマオウ科のシナマオウと言う植物の茎を乾燥させたものです。
麻黄は「エフェドリン」と言う成分を含みます。交感神経興奮剤としての作用を持つため、容量によって血圧が上がる場合があります。
そのため、高血圧、心臓病を持つ場合は注意が必要な生薬です。
麻黄は発汗、鎮咳作用、気管支の痙攣を抑制する作用が期待される生薬で、風邪薬に多く配合されます。
ドラッグストアでも購入できる「葛根湯」にも麻黄が配合されています。葛根湯は、犬の耳の初期の炎症で熱感や痛みがある場合にも用いられます。
2.附子
附子はキンポウゲ科のハナトリカブトの根を乾燥させたものです。
トリカブトには様々な種類がありますが、猛毒を持つことで知られています。山菜と間違えて食べてしまうことで中毒を起こす例も報告されています。
参考 | 自然毒のリスクプロファイル:高等植物:トリカブト
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000082112.html
猛毒を持つトリカブトをそのままでは生薬として利用できないため、毒性を弱める加工をしたものが生薬として利用されます。
毒性を弱めた生薬としての「附子」は体を温める作用、鎮痛作用に優れます。
そのため、関節痛、神経痛の改善に効果のある方剤に用いられます。
副作用としては投与量が多いと舌、唇のしびれ、吐き気、動機、不整脈、のぼせなどが現れる場合があります。
八味地黄丸は附子を含み、犬の老化に伴う足腰の弱り、冷え、排尿回数の増加に対して用いいられる方剤です。附子の持つ、体を温める作用や関節痛改善作用を利用しています。
3.大黄
タデ科のダイオウとい言う植物の根を乾燥させたものです。
大黄には瀉下作用があるため、副作用として下痢をする場合があります。
便秘を解消する下剤としての作用があります。「大柴胡湯」と言う漢方薬には大黄が含まれ、体格ががっちりとした食欲旺盛で食べ過ぎてしまうタイプの犬の便秘改善に用いられることがあります。
4.甘草
甘草は犬の体質により「偽アルドステロン症」を引き起こす場合があります。
これは血圧を上昇させるホルモン「アルドステロン」が増加していないにも関わらず、血圧が上昇する、手足の力が抜けるなどの症状が現れることを指します。
生薬としての甘草は、様々な生薬の働きを調和させる目的で使用されます。そのため多くの方剤に配合されています。複数の方剤を長期にわたって服用する場合、甘草摂取の「総量」が多くなり、副作用を発症する場合はあるため注意が必要です。
補中益気湯は食欲がなく元気もない犬の「胃腸を丈夫にする」目的で使用される方剤ですが、甘草が使用されています。
漢方薬にも副作用は「ある」。注意書きをしっかり読もう。
西洋薬同様、漢方薬にも副作用はあります。どんな薬も購入時や薬局で処方される際、副作用の説明が添えられます。漢方薬も同様です。
漢方薬の副作用は、体質、持病の有無、摂取量によって変わります。また、犬によっては漢方薬に含まれる薬剤にアレルギーを持つ場合もあります。
薬を利用する場合は副作用は隣り合わせです。多くの場合、犬も漢方薬を副作用なしで安全に利用可能ですが、副作用の起こる可能性もゼロではありません。
このことを飼い主さんが正しく理解し、漢方薬を利用することが大切です。