「血液検査で犬の肝臓の数値が上がってしまって心配です」
「犬が慢性肝炎になってしまいました」
慢性肝炎は犬に多い疾患です。慢性肝炎にも漢方薬を利用することが可能です。慢性肝炎の場合、西洋医学的治療との併用が前提です。
この記事では、慢性肝炎に使用される漢方方剤の紹介と「慢性肝炎とはどういう病気か?」「そもそも肝臓ってどんな働きをしている臓器なの?」を併せて解説します。
犬の肝臓疾患と向き合う際は、肝臓そのものを知る必要があります。初心者向けに解説していきます。
犬の慢性肝炎ってどんな病気?
慢性肝炎とは、何らかの理由で炎症が起こり、肝臓の細胞が破壊され続ける病気です。
肝臓の細胞が破壊されると、細胞内に存在していた「酵素」が血液中に漏れ出してきます。
例:
ALT(GPT)は肝細胞中に多く存在する酵素です。この酵素の量が血液中で増えている場合、何らかの理由で肝細胞が破壊されている=肝臓の障害が疑われます。
「量が増える=数値が上がる」となります。
慢性的な炎症が続くと、肝臓は繊維化し、最終的に肝硬変へと進行します。
肝臓の繊維化とは?
肝臓の細胞が繰り返し破壊され、それを修復する過程で「瘢痕組織(はんこんそしき)」が形成されることを指します。
一度だけ細胞が破壊された場合だと、通常、破壊された部分の細胞は新しい肝細胞に置き換わります。
ところが繰り返し破壊されると、正常な肝細胞への置き換えがうまくいかず、瘢痕組織となります。
瘢痕組織は肝細胞とは異なるものです。そのため、肝細胞としては機能しません。
瘢痕組織は肝臓内の血流、および肝臓への血流を妨げます。十分な血液が届かないことでさらに多くの肝細胞が死滅します。
一度繊維化が起こり、数ヶ月が経過すると繊維化した肝臓の組織はもう元に戻らないとされています。
肝硬変
肝硬変は肝臓へ広範囲で繊維化が生じた状態を指します。
繊維化は肝細胞としての機能を果たさない、瘢痕組織によるものです。
そのため肝臓が、本来行うべき薬や毒素、体内の老廃物の分解、処理が正常に行われなくなります。
これにより、これまで問題なかった量の服薬でも副作用が出やすくなったり、肝臓で処理されるべきビリルビンが皮膚に蓄積し、黄疸が起こります。
ビリルビン:
古くなった赤血球が破壊された際、出てくる赤い色素。通常、肝臓で処理され、胆汁または尿へ排泄へされます。
肝硬変が進行すると「肝不全」に。
肝不全は肝臓の機能が大幅に低下した状態を指します。
肝臓は以下の働きを担っています。
肝臓の働き:
- 消化液の一種「胆汁」の分泌
- 栄養素、ホルモンの代謝
- 解毒
- 排泄
- たんぱく質合成
これらが正常に行えなくなった状態が「肝硬変」です。
肝硬変の症状:
- 黄疸
- 腹水
- 食欲不振
- 体がだるい、疲れやすい
肝臓は沈黙の臓器。早期発見、早期対応が鍵。
肝炎の兆候は、血液検査で早期発見が可能です。
肝臓は沈黙の臓器とも呼ばれ、かなり病気が進行してからでないと症状が出にくいという特徴があります。
症状が出始める頃には、すでに病気がかなり進行し、治療が難しいケースが多くなります。定期的な血液検査、健康診断で肝臓の状態をチェックすることが大切です。
犬の慢性肝炎は原因が不明なことも多く、進行性の場合、一生涯にわたる治療が必要です。
その一方で、投薬治療によって、進行を遅らせることができる場合があります。
投薬治療については、かかりつけの動物病院へ相談しましょう。症状が出ない早期のうちに、早めの対応をすることが大切です。
漢方薬は、西洋医学的治療と「併用」しよう。
慢性肝炎は早めの投薬治療で、その後、犬が長く健康的な生活を送ることも可能な病気です。
そのために、必ず動物病院で西洋学的治療を受けることが大切です。漢方薬は犬の体調管理、不快な症状を和らげる目的での併用が基本です。
小柴胡湯(しょさいことう)
胃腸、肝臓、呼吸器に作用する方剤です。炎症を抑える効果が期待されます。慢性肝炎での肝機能障害に用いられます。
肋骨の下が張って苦しい、食欲不振、吐き気、倦怠感のある場合に。
ただし、インターフェロン製剤を使用中の場合や肝硬変、肝臓がん、慢性肝炎で血小板が少ない場合は使用できません。
使用の際は獣医師とよく相談することが大切です。