Office Guriの諸橋直子です。さて今回は「ミモザの誤食に注意!犬に危険な身近な植物」をテーマにお送りします。
ここ数年、春先に「ミモザ」の花を見かける機会が増えたなあと感じることはないでしょうか?私自身は今年になって近所のイオンで「ミモザ」の花が売られているのを見て
「うわあ!ネットでしか見たり聞いたりしたことのなかったミモザが北海道のうちの近所のイオンで売られているなんて、ひょっとしてミモザは今流行っている??」
と感じました。
さらにそれからしばらく経った後に、Xで「ミモザ」を誤食してしまった動物の看護にあたられた動物看護師さんのポストが流れてきて、大変驚きました。
「ええええ、ミモザって毒性があるの??」
早速調べてみると、確かに犬猫には毒性がありました。
ところでこの記事は「犬」に特化した情報をお届けしているので猫についてはこれ以上言及しません。なので犬に対する毒性について、解説していこうと思います。
もし花束などでもらって毒性があることを知らずに犬がいる部屋にミモザを飾っていた、という場合は、誤食事故防止のため犬のいない空間に飾ることをおすすめします。
また「ミモザが犬にとって良くないことを全然知らなかった!」という方に必要な情報として、この注意喚起が届くことを願ってこの記事を書いている次第です。
では「ミモザ」の何が良くないのか、誤食するとどんな中毒症状が起こるかなどについてお話ししていきます。
新顔の「ミモザ」は犬の誤食に注意!消化管の炎症、腎不全につながる場合も。
「ミモザ」は本来、「オジギソウ」などのマメ科オジギソウ属の植物を指す言葉でした。
それが見た目が似ているという理由で、「ギンヨウアカシア」などマメ科アカシア属の植物を「ミモザ」と呼ぶようになりました。
そのため現在「ミモザ」といってもそれは本来の「ミモザ」ではなく、「ミモザ」に似た別の何かという、ややこしいことになっています。
国連によって制定された「国際女性デー」という日があります。毎年3月8日がその日にあたり、国際連合広報センターによれば、
『女性たちが、平和と安全、開発における役割の拡大、組織やコミュニティーにおける地位向上などによって、どこまでその可能性を広げてきたかを確認すると同時に、今後のさらなる前進に向けて話し合う機会』
を目的として設定された記念日です(*1)。
そしてこの日に女性にミモザを送るというイタリアの習慣が日本に輸入され、若い世代を中心に人気が高まってきました。
日本におけるミモザの取引量はここ十年で3倍になっています(*2)。国際女性デーに限らず、春の花として人気が伸びているためみなさんのお近くでも、取り扱いをしている花屋さんが増えているかもしれません。
” 国際女性デーにミモザを贈るのは素敵な習慣です。
一方で花束を犬の居住空間に飾らないなどの誤食事故防止の取り組みも、愛犬家の皆さんはぜひ行ってください “
さてそんな新顔の「ミモザ」ですが、犬が誤食すると
- 嘔吐
- 食欲不振
- 元気喪失
- 腎不全
などの中毒症状を起こす危険性が高いです。
これまで犬の中毒事故が多く報告されている植物であれば、多くの方が注意して予防に努めることができます。
しかしながらこうした「最近人気が出てきて、広く流通し始めた植物」の場合、犬が誤食すると中毒になること自体が「知られていないまま」花束でもらって犬のいる部屋に飾ってしまうなどの危険があります。
なのでこの機会にぜひ、多くの方に「ミモザは犬に危険ですよ」と知っていただければと思います。
ではなぜ、「ミモザ」は犬に良くないのでしょうか?引き続き、中毒を起こす成分についてお話しします。
「ミモザ」に大量に含まれる「タンニン」が、犬に中毒症状を引き起こします。
「ミモザ」にはたくさんの「タンニン」が含まれます。「タンニン」は赤ワインや柿の「渋み」成分として知られます。植物が作り出すポリフェノールの一種です。
「タンニン」は「革をなめす=やわらかくする」という意味の英語 “tan” に由来しています。植物に含まれる「タンニン」が革に含まれるタンパク質に作用し、なめしの作業が行われます。
余談ですが「ミモザ」の樹皮は多くの「タンニン」を含むため、革なめしによく使用される植物でもあります。
ではこの「タンニン」がなぜ、犬の健康に影響を与えるのでしょうか?
実は私たち人間や犬などの哺乳類は、一度に大量の「タンニン」を摂取すると「タンニン」が消化管の内壁に作用し炎症や壊死を引き起こします(*3)。
革を加工する際に「タンニン」が作用し革が柔らかくなることを考えると、同じタンパク質でできている消化管の内壁も一度に大量の「タンニン」に晒されることでトラブルになりそうなことは想像しやすいと思います。
(消化管の内壁が「なめされる」と考えるとちょっと嫌ですね)
また一部のタンニンの分解産物は腎不全を起こすことが指摘されています(*4)。
つまり私たち人間も、ミモザの花を誤って食べると中毒を起こす可能性があります。(もちろん人間は食べませんが)
ちなみに「ミモザサラダ」という料理がありますが、あれは卵黄をミモザの花になぞらえただけで「ミモザ」を実際に使っているわけではありません。
「タンニン」自体は量の差はあるものの、広く植物が持つ成分として知られています。
「柿」を大量に食べるとできる「柿胃石」が一時話題になりました。あれは柿に含まれる「タンニン」である「シブオール」が胃酸と反応し胃に石ができることで激しい腹痛を起こすというものです。大きくなったものは手術で取り出すなど大事になる場合もあります。
いずれにせよ、どんなものでも「量」が問題です。
「ミモザ」は「タンニン」の含有量が多い点が、危険な理由というわけです。
観賞用の植物は、犬の手の届かない場所に置くを基本に考えよう。
今回は新顔の植物で犬に中毒の危険がある「ミモザ」について解説しました。
実はミモザ以外にも観葉植物や庭に植える観賞用の植物の中には、犬が誤植すると中毒症状を起こす危険なものは数多く存在します。
そのため家にお花を飾ったり庭に植物を植える際には、好奇心旺盛な犬がいたずらをしないよう注意し、危険なものは置かない、植えないなどの配慮が必要です。
ぜひ大事な愛犬の安全のために、中毒植物についても知っておいてくださいね。
それでは、また!
参考
(*1)国際女性の日2014 | 国際連合広報センター
https://www.unic.or.jp/activities/humanrights/discrimination/women/womens_day_2014/
(*2)ミモザ 取引量10年で3倍に 春を演出、若い世代に拡大 | 日本農業新聞
https://news.yahoo.co.jp/articles/06a63e655bc2104de20bac3723332a0dfa6da8d9
(*3、4) 哺乳類科学 |植物資源中の被食防御物質タンニンの分布:
哺乳類のタンニン摂取の潜在的可能性について
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mammalianscience/63/2/63_193/_pdf/-char/ja

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