犬の手作りごはん初心者向けに「栄養学」の基本を解説するシリーズ記事です。前回の記事はこちら。
今回の記事では「脂質」について解説します。
脂質とは?
脂質とはいわゆる「油」のことです。肉や魚に含まれる脂身から、調理に利用する植物オイル、ラード、牛脂など様々な種類があります。
脂質の多い食品は以下の通りです。
- 鶏の皮の部分
- ロース肉、バラ肉など脂身の多い部位
- ラード、牛脂などの脂
- オリーブオイル、菜種油などの油脂類
脂質は1gあたり9kcalとなります。エネルギー源としてだけでなく、細胞膜やホルモンなど体にとって重要な物質の材料にもなります。
また体温を維持し、体を外部の衝撃から守る働きも担っています。
脂溶性ビタミン(A・D・E・K)は油に溶ける性質のあるビタミンですが、脂質はこれらのビタミンが体に吸収されるのを助けます。
皮膚の表面を守る皮脂の材料にもなるため、犬の健康な皮膚を守るためにも適度な摂取が望ましい成分です。
脂肪酸 | 脂質の性質を決める成分
脂質は「脂肪酸」に「アルコール」が結合した形をとります。この脂肪酸の種類により、その脂質の性質や犬や私たちの体にどう働きかけるか?が変わります。
ここではその「脂肪酸」について詳しくみていきます。
飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸
脂肪酸はその中の成分の結合方法によって
- 飽和脂肪酸
- 不飽和脂肪酸
に分類されます。
脂質の中に含まれる炭素すべてに水素が結合しているものが「飽和脂肪酸」、炭素同士が二重結合しているものを「不飽和脂肪酸」と呼びます。
不飽和脂肪酸はさらに、炭素同士の二重結合が1つのものが「一価不飽和脂肪酸」、2個以上のものが「多価不飽和脂肪酸」に分類されます。
栄養学初心者の人はここでは、脂肪酸には以下の分類があるのだな、ということをとりあえず覚えておくだけでOKです。
- 飽和脂肪酸
- 不飽和脂肪酸(一価・多価)
体で合成できない「必須脂肪酸」
体にとって必要な脂肪酸のうち、体内で合成できないものを「必須脂肪酸」と呼びます。多価不飽和脂肪酸は体内で合成できないため、食事から摂取する必要があります。
脂肪酸の種類と働き
脂肪酸の種類と働きを以下にまとめます。
飽和脂肪酸
- パルミチン酸
- ステアリン酸
- ラウリン酸
- ミリスチン酸
- カプリン酸
働き:
コレステロールを増やす・中性脂肪を増やす・血液の粘土増加
多く含む食品:
パーム油・やし油・ラード・バター
飽和脂肪酸を多く含む油脂類の特徴は常温で多くの場合、固形です。
一価不飽和脂肪酸
- オレイン酸
働き:
LDL(悪玉コレステロール)の低下・動脈硬化予防・心疾患予防・高血圧予防
多く含む食品:
オリーブオイル・菜種油(キャノーラ油)・サラダオイル
多価不飽和脂肪酸
多価不飽和脂肪酸はその構造から「n-6系」と「n-3系」に分けられます。
n-6系
- γ-リノレン酸
- アラキドン酸
- リノール酸
働き:
血圧の調整・LDLコレステロールの低下など
多く含む食品:
γ-リノレン酸はしそ油、えごま油。
アラキドン酸はレバー、卵白。
リノール酸は紅花油、ひまわり油、大豆油、コーン油、ごま油。
n-3系
- α-リノレン酸
- DHA
- EPA
働き:
動脈硬化・高血圧の予防・LDLコレステロールの低下
多く含む食品:
α-リノレン酸は月見草オイル。
DHAは本マグロの脂身、ぶり、鯖、ハマチ、さんま。
EPAはマイワシ、本鮪の脂身、鯖、ぶり、うなぎ、さんま。
脂肪酸はバランスよく取ろう
「飽和脂肪酸はコレステロールを増やす」
「不飽和脂肪酸は悪玉コレステロールを低下させる」
こう聞くと、なんだか飽和脂肪酸は体に悪いもの、不飽和脂肪酸は体に良いもの、というイメージがつきませんか?
でもこのイメージは偏っていて、誤りです。飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、いずれも体にとって必要で大切なものです。
コレステロールもLDLは悪玉、HDLは善玉とよく言われますが、LDLも体にとっては必要なコレステロールです。闇雲に減らせば良い、というものではありません。
大切なのはバランスです。体に良いと聞いたからと言って、特定の脂肪酸のみを偏って摂取するのはおすすめではありません。
色々なものを手作りごはんで犬に食べさせることで、脂肪酸も偏りなく、体に必要な量を摂取することができます。
脂質についてのまとめ
- 脂質は1g9kcalと高エネルギーで貯蔵可能
- エネルギー源
- 細胞膜やホルモンの材料となる
- 脂溶性ビタミンの吸収を助ける
- 体を衝撃から守り、体温をキープする
- 皮脂の材料となり、皮膚の健康を守る
- 脂質の性質を決めるのは脂肪酸
- 偏りなく、様々な種類の食品を食べることで必要量を摂取できる