犬に多い皮膚病について解説するシリーズです。今回は「疥癬(かいせん)」を取り上げます。
疥癬とは?
ヒゼンダニ(別名:疥癬虫)類によって起こる皮膚疾患を指します。
犬に寄生するのは「穿孔ヒゼンダニ(穿孔疥癬虫)」です。穿孔ヒゼンダニは犬以外にも人、その他の哺乳類に感染します。
穿孔ヒゼンダニは世界中に分布しています。日本でもごく普通にみられる寄生虫です。
体長は0.2〜0.4mmと小さく、宿主の皮膚に穴を開け、そこに住み着き一生を過ごします。このようにして穿孔ヒゼンダニに帰省されると、激しいかゆみを伴う皮膚炎が発生します。これが「疥癬」と呼ばれる病気です。
疥癬の症状
疥癬は全身で起こる病気ですが、特に犬の耳や手足に激しい症状を起こすことが多くあります。
強いかゆみが特徴の病気です。そのため犬が皮膚を掻きむしることで傷ができ、そこから細菌が感染し、化膿することもあるため注意が必要です。
治療法
イベルメクチンなどの薬物療法でヒゼンダニを駆除します。
イベルメクチンは経口駆虫薬で、2015年にノーベル化学賞を受賞した大村智氏によって発見されました。犬糸状虫症(フィラリア症)の予防に用いられる薬でもあります。
人間の疥癬治療でも用いられ、保険適用の対象になっている治療薬でもあります。
イベルメクチンはダニが卵の状態だと効果がありません。そのため、ダニの卵が孵化しところを狙って服薬する必要があります。完全にダニを殲滅するためには2〜3回程度の投薬が必要な場合があります。
こうした特性があるため、投薬間隔、回数、期間については担当の獣医師に指示に従い、適切に投薬する必要があります。
疥癬は他の動物に感染する
疥癬は、すでに感染している他の動物との接触でうつります。発症した犬はできるだけ早く治療を受ける必要があります。
多頭飼いの場合は、他の犬に移る場合があるので注意が必要です。また散歩などで外部の犬とも接触しないよう、注意します。
穿孔ヒゼンダニは人へ感染することは基本的にありませんが、免疫力が極端に低下している場合は感染する場合もあります。
強いかゆみは犬にとって強いストレスとなる
疥癬によるかゆみは犬にとって大きなストレスになります。できるだけ早く動物病院で適切な治療を受けることが大切です。